2025/4/7

250407_定年後起業-未来マップ作成ワークショップ

「夫婦の価値観がピタッと合う!未来マップ作成ワークショップ」

 

「ママ、この家、住み続けられるの?」

——その一言が、私たち家族の未来を変えた。

 

1.あの日、凍りついたリビング

「ママ、この家、ずっと住んでていいの?」

その日、仕事を終えて夕食の支度をしていた私に、長男が何気なくそう聞いてきた。小学1年生になったばかりの息子の無邪気な言葉に、私は手に持っていた包丁を思わず止めた。

「どうして?」

「だって、ニュースで“家を手放さなきゃいけない人”の話やってたから……。」

心臓がバクバクした。息子の何気ない一言が、私の中に押し込めていた“あの不安”を一気に浮かび上がらせたのだ。

夫と共働きで、子どもは2人。都市部での生活は決して楽ではない。住宅ローン、教育費、老後資金……どれを考えても、お金のことは常に頭の片隅にある。でも、向き合うのが怖くて、夫と深く話し合うことも避けてきた。

「今は大丈夫よ」と笑って返した私の声は、自分でもわかるほど震えていた。

 

2.すれ違う夫婦の価値観

夫は真面目で優しい人。でも、お金の話になるといつも口をつぐんでしまう。

「なんとかなるよ」「それより今を大事にしよう」

彼のそのスタンスが、時には頼もしくもあり、時には無責任にも思えた。

「“今を大事に”ばっかりじゃ、将来困るのよ!」

ある日、私がそう声を荒げたとき、夫は黙って部屋を出ていった。お互い、悪気があったわけじゃない。ただ、不安の表現の仕方が違うだけ。だけど、その“違い”が、私たちを少しずつ遠ざけていた。

3.出会いは、Instagramの投稿だった

ある日、ふと目に入ったInstagramの投稿に私は目を奪われた。

「夫婦の価値観がピタッと合う!未来マップ作成ワークショップ」

「未来マップって、なんだろう?」

それは、教育・住宅・老後など、家族のライフイベントを1枚に“見える化”するというワークショップだった。そして何より私の心をつかんだのは、「中立な立場でサポートする」「売り込み一切なし」の言葉。

「これなら、夫と一緒に参加できるかもしれない」

半信半疑だったが、私はその夜、夫に相談してみた。

「話すだけでもしてみようか」

夫が珍しくすぐにうなずいてくれたのは、きっとあの日の私の不安げな表情を彼も感じ取っていたからだろう。

 

4.はじめて、ちゃんと向き合えた日

ワークショップの第1回セッションはオンラインだった。

画面越しに現れたファシリテーターは柔らかい口調で、私たちにこう言った。

「今日は“正解”を出す日ではありません。お二人の価値観を“見える化”するところから始めましょう。」

まずは、それぞれの「お金・教育・暮らし・老後」に対するイメージを言葉にするワーク。思いのほかスラスラと話せたのは、第三者が間に入ってくれていたからだと思う。

私は教育を重視したい派。夫は暮らしの豊かさを大事にしたい派。以前ならぶつかって終わっていた価値観の違いが、「なるほど、そう考えていたんだね」という気づきに変わっていくのが、不思議だった。

「なんか、ちゃんと話せたね」

セッションの終わり、夫が照れくさそうに言ったその言葉に、私は思わず笑ってしまった。

 

5.“未来”が、数字とともに見えてきた

第2回では、家族のライフイベントを洗い出した。

「娘が高校卒業するのが2038年か…」「その頃、私は定年…?」

講師のガイドに従いながら、教育・住宅・旅行・老後…あらゆるイベントを年表に書き出していく。必要なお金も具体的に。

「…けっこうかかるな…」

夫が真顔になった。私も内心はドキドキ。でも、それ以上に感じたのは、未来が“ぼんやり”から“輪郭あり”に変わっていく安心感だった。

「これでいいんだよ。まずは見えるようにしなきゃ、不安も整理できないんだから。」

 

6.“もしも”を語る勇気が持てた日

第3回では、病気や失職、親の介護といった“想定外”の出来事への備えを考えた。

それまで、どこか「縁起でもない」と避けてきたテーマ。でも、このセッションでは、具体的な制度や支援を含めて、中立な情報として扱ってくれた。

「もし私が病気になったら…」「もし夫が働けなくなったら…」

そのとき、どうやって生活を守るか。子どもたちに迷惑をかけないために今できることは何か。

こうした話が、感情的にならず、建設的に話せること自体が新鮮だった。

 

7.そして完成した、わたしたちだけの“未来マップ”

最終回。これまでのワークを一枚にまとめる「未来マップ」作成。

10年後のわたしたち。子どもたちは中高生。夫は今より少しペースを落とした働き方をし、私は地域の活動や小さなカフェで働いている。年に一度、家族で旅行に出かける。

そんな未来を描いた「家族の人生設計図」は、単なる計画ではなく、“私たちらしさ”が詰まった宝物になった。

「これを見れば、迷っても戻ってこられるね」

そう話したとき、私たちは確かに“同じ方向”を見ていた。

 

8.変わったのは、生活ではなく“関係性”

ワークショップが終わって、劇的に収入が増えたわけでも、ローンがなくなったわけでもない。

でも、日々の会話が変わった。

「これって、未来マップに沿ってるかな?」

「ちょっと見返してみようか」

未来を語ることが、ケンカの原因ではなく、“安心の確認”に変わったのだ。

そして、息子の何気ない質問にも、今は自信を持ってこう答えられる。

「この家には、ずっと住めるよ。パパとママで、ちゃんと準備してるからね。」

 

9.不安が“敵”じゃなくなったとき

人生に、不安がゼロになることはない。むしろ、不安は常にある。

でも、私たち夫婦はそれを“敵”ではなく、“準備すべき相手”として受け止められるようになった。

「夫婦で未来のことを話せる」

たったそれだけで、こんなにも安心できるなんて——。

 

10.あなたも、まずは“話す”ことから

かつての私たちのように、「話し合いたいのに話せない」「将来を考えるのが怖い」と感じている人がいたら、声をかけたい。

「未来は、“可視化”できますよ」と。

そして、「今こそ、たった数時間でも夫婦で向き合う時間が、10年先の安心になる」と。

——あの日、息子の一言がくれた“きっかけ”。

それは、私たち家族の未来を大きく変える扉だった。

 

以上です。