2025/6/3
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250603_Zモニター-震災復興予算は予備費からか? |
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予備費だけで本当に足りる? 能登半島地震復興を遅らせた“財政の壁”とは?
1.導入:予備費で足りる?あなたが知らない復興の“現場の声” あなたは、震災復興に使われる国の予算が「予備費」でまかなわれていることをご存じでしょうか? そして、その予算配分の仕組みが、現場の復旧作業を遅らせているとしたら——。2024年の能登半島地震。未曽有の災害に見舞われた被災地では、いまもなお生活インフラの復旧や地域産業の再建が進まず、多くの方が苦しい状況に置かれています。そうしたなか、注目されたのが衆議院「決算共生監視委員会」での河村たかし議員による質疑です。河村氏は、「なぜ今回の震災では、予備費で“ちょっとずつ”支援するやり方をとったのか」と、政府の対応に鋭く切り込みました。 本来、災害対応はスピードが命。 東日本大震災や熊本地震など、過去の大規模災害では、発災から1か月以内に1兆円規模の補正予算が組まれてきました。ところが今回は、複数回に分けた予備費の執行が中心。河村氏はその非効率性を「現場を知らぬ官僚による机上の管理」と批判しています。この遅れのツケを払わされているのは、被災者たち自身です。 復旧の鍵を握る自治体は、中央からの許可なしに大胆な判断ができず、支援はすべて“お伺い”ベース。官僚の審査を通してようやく支出が認められる体制では、現場の柔軟な対応など望むべくもありません。 この記事では、この予備費運用の実態と、それが日本全体の危機対応に及ぼす影響、そして本当に必要な復興のあり方について、あなたとともに考えていきたいと思います。
2.問題の説明:なぜ能登の復旧が進まなかったのか? 被災地の復旧が思うように進まない——それは決して「自然災害だから仕方がない」というだけではありません。 能登半島地震から1年半が経とうとしている今も、漁港の整備は遅れ、下水処理や生活インフラの再建も滞ったままの地域が少なくありません。 その主な原因のひとつとして指摘されているのが、「予備費」による予算対応です。予備費とは、緊急事態に備えて国が一定の枠で確保しておく財政措置のことですが、本来は応急的な処置に使われるべき性質のものです。それにもかかわらず、今回は1兆円以上の支出を予備費で“段階的に”処理する方式が取られました。 このような「逐次投入型」の予算執行は、迅速性を欠きます。なぜなら、地方自治体や被災地が復興計画を立てるたびに、財務省への申請、審査、承認という官僚的プロセスが必要となるからです。書類審査が終わるまで現場の作業が進まない。つまり、予算が下りなければ工事も人材も動かせないという“許可制の復興”なのです。 加えて、今回の制度設計では、地方自治体が独自に判断して動ける「裁量」も大きく制限されていました。たとえば、石川県が早期に復興工事を進めようとする場面でも、中央からの補助金の内示がない限り、予算措置は難航します。その結果、「いま必要な支援」が数か月後にしか届かないという現象が、被災地各地で起きてしまっているのです。 こうした中で、河村たかし議員は国会の場で強く指摘しました。「予備費による逐次審査ではなく、なぜ発災直後に大規模な補正予算を組まなかったのか」と。実際、過去の震度7クラスの災害では、いずれも迅速な補正予算で復旧を支えた前例があります。にもかかわらず、今回はなぜこの判断がなされなかったのでしょうか。 “被災地を本気で支えたい”というのであれば、スピード感のある予算措置と、自治体が自由に使える資金配分が不可欠です。 現在の制度のままでは、被災地の復興は後手に回り、現場は疲弊していくばかりです。
3.問題の要因:財務省の硬直的な予算管理と日銀資金の“封印” なぜここまで支援が遅れるのか。根本には、「財務省の発想そのもの」にあると河村たかし議員は指摘しています。 河村氏はこの問題を「会社でいえば総務部の発想」と表現しました。つまり、支出を管理し、形式や手続きを重視する部門の論理だけで国家運営がなされているということです。一般企業でも、実際に売上を生むのは営業部です。同じように、日本経済を動かすには、財政支出や民間投資を積極的に促す“攻めの発想”が不可欠です。 しかし現在の財政運営は、支出をできる限り絞ることが「健全」とされ、災害時ですら予算配分に慎重すぎる傾向があります。その結果、命と生活を守るはずの支援が遅れ、現場の行動も制限されるという本末転倒の状況に陥ってしまっているのです。 加えて、河村氏は日本銀行の当座預金残高に注目します。現在、日銀には約530兆円もの当座預金が積み上がっています。この巨額の資金が実体経済に回らず、日銀の帳簿上にとどまっているのが現状です。民間銀行はその資金を貸し出すことができず、財務省も「これは日銀の負債だから使えない」との立場をとっています。 しかし、この「使えない」という発想こそが、河村氏のいう“便秘経済”を生んでいるとされます。資金があるのに流れない、投資したいのに許可が出ない、地域が復旧したいのに予算が通らない。こうした「資金の滞留」が日本経済全体の停滞に直結しているのです。 本来、災害復興は「迷わずやる」べきものであり、財務省の論理だけで抑え込むものではありません。にもかかわらず、国債発行の枠や帳簿上の負債構造だけを根拠に、「使えるお金」をあえて使わないという判断が繰り返されてきました。 必要なのは、制度にとらわれず国民の生命と生活を守る“覚悟の財政”です。 そうでなければ、予算はあっても使えない、資金はあっても届かないという矛盾に、私たちはこれからも苦しめられ続けることになるでしょう。
4.国民の意見:現地住民・自治体・経済人の不満と焦燥 「なぜ、こんなに時間がかかるのか?」——これは多くの被災地住民が口にする共通の疑問です。震災から半年が経過しても、仮設住宅の建設が終わらない地域があり、漁港や下水処理施設の再建は手つかずのまま。道路の寸断や物資の届かない集落も、いまだに存在しています。報道を通じて、こうした現状に対する不満の声が全国に広がるなか、復旧・復興のスピード感に対する「疑念」は確実に高まっています。 特に、自治体の首長たちは「現場でやる気があっても、中央が動かない」と強い不満を示しています。石川県をはじめとする被災自治体は、自ら独自の復旧計画を立てて動こうとしても、国からの予算配分がなければ工事を発注できません。国の予備費による対応では、予算執行のたびに“申請→審査→許可”というプロセスが求められ、結果として現場の動きを止めてしまっています。 また、経済人や中小企業経営者の間からも、厳しい声が上がっています。 「支援金の申請書類が煩雑すぎて間に合わない」 「銀行融資よりも遅い支給では、再建どころか廃業の危機だ」 こうした声が商工会議所や業界団体から数多く寄せられており、「財政的支援が制度のせいで現実的に機能していない」との批判が強まっています。 国民全体としても、「なぜ東日本大震災のように一気に補正予算を組まないのか?」という疑問は根強くあります。災害時に予備費だけで対応するという政府の姿勢に対して、「命を守る気が本当にあるのか?」という感情的な不信感すら広がっているのです。 そしてもう一つ、SNSを中心に広がっているのが、「政治と行政の感覚のズレ」への怒りです。 「現場の苦しみを見ずに、数字と手続きだけで判断する霞が関に任せていて良いのか?」 という問いは、今や単なる一部の識者の声ではなく、多くの市民のリアルな実感になりつつあります。 このように、被災地の人々だけでなく、自治体、経済界、そして一般の国民までもが、現行制度と国の対応に対して不満と焦燥を抱えています。復興が“お上の采配”でしか進められない構造そのものが、日本の災害対策の弱点となっているのではないでしょうか。
5.再発防止は?:予算制度の見直しと自治体主導の復興体制 これまでの問題を解決するには、災害対応における「制度」と「判断の主体」を根本から見直す必要があります。 鍵となるのは、迅速で柔軟な予算執行体制と、自治体が主導権を持てる制度設計です。 まず第一に検討すべきは、発災直後の「補正予算」の即時可決ルールの確立です。過去の東日本大震災や熊本地震のように、国会が速やかに1兆円単位の補正予算を可決し、必要な支援を一括で確保する仕組みを制度化するべきです。これにより、逐次的な申請と審査を経なくとも、被災地が早期に資金を手にすることができます。 次に重要なのは、自治体への「予算決定権」の委譲です。災害時にこそ、現場を最もよく知るのは地元の首長や職員です。自治体が、国の承認を待たずに独自の判断で予算執行できるよう、一定額を「地域復興枠」として裁量予算に設定する制度が求められます。特に被災直後の数週間は、迅速な判断と即応力が問われるため、現地での自由裁量は欠かせません。 さらに、民間資金と公的支援を融合させる「協働モデル」の確立も急務です。たとえば、地元金融機関や企業団体と連携し、民間による復旧投資や人材派遣に対して、政府が保証や補助を与える制度があれば、地域経済の再建が加速されます。これは河村議員の主張する「営業部的発想」、すなわち民間経済の力を最大限活用する視点とも一致します。 加えて、日銀の当座預金など、現在使われずに滞留している資金の一部を災害復興特別枠として活用できる制度設計も検討するべきです。もちろん日銀の会計上の制約はありますが、非常時における特例措置や立法による対応があってしかるべきです。 「復旧に時間がかかるのは仕方がない」——その常識を覆すには、制度そのものを変える覚悟が必要です。 形式に縛られた支援ではなく、現場に即した支援を。 中央主導ではなく、地域主導でこそ、災害からの真の再生が可能になるのです。
6.まとめ:復興は“お上の許可制”ではなく、地域から生まれる 能登半島地震の復興が遅れている背景には、単なる資金不足ではなく、制度の硬直性と中央集権的な予算運用の構造的な問題があることが見えてきました。予備費の逐次的な支出による「許可制の復興」は、結果として現場の判断を妨げ、スピードを著しく損なっています。 河村たかし議員が訴えたように、被災地に必要なのは、今すぐ使える予算と、自ら判断して動ける裁量の確保です。 災害は待ってくれません。今日必要な支援を、明日ではなく“今日”届ける仕組みこそが命と暮らしを守ります。そのためには、制度の前提を「管理」から「信頼」へと転換することが不可欠です。自治体や民間の判断を信頼し、中央は支援に徹する。そうした役割分担が、本来のあるべき災害対応の姿ではないでしょうか。 あなたがこの記事を読んで感じた違和感や問題意識は、とても大切な感覚です。 「もっと現場を信じる政治に変えなければならない」——そうした思いが、次の一歩につながります。 今こそ、制度と仕組みを見直し、復興を“上からの指示”ではなく“現地の声”から生み出す時です。 未来の災害に備えるためにも、今回の教訓を見過ごしてはなりません。
7.関連記事へのリンク:財政・災害・国家運営を深掘りするために 今回の能登半島地震における予算執行の問題は、単なる一時的な行政判断ではなく、日本の財政構造と災害対応の根本的な課題を浮き彫りにしています。 ここでは、さらに理解を深めるためにおすすめの記事を5つご紹介します。興味のあるテーマからぜひご覧ください。
1)【日本の公的債務:その実態と私たちへの影響】 日本の長期債務残高はGDP比で世界最悪とも言われています。本記事では、その背景と国民生活への影響をわかりやすく解説しています。 →「税金が上がる理由って?」「本当に破綻するの?」と疑問を感じたあなたにおすすめです。 2)【財政健全化と経済成長の両立:可能性と課題】 「財政健全化」と「経済活性化」は両立できるのか?民間投資の活用や、長期視点の政策の在り方を解説しています。 →今回の記事で紹介した“営業部的発想”に共感した方は必見です。 3)【地方自治体と中央政府の役割分担:復興の現場から見た課題】 災害時における自治体の裁量権や限界、そして国の責任とは?制度のボトルネックとその打開策を具体的に論じています。 →自治体職員や地方政治に関心のある方におすすめです。 4)【震災と政治:過去の教訓から未来を描く】 東日本大震災や熊本地震における政治的対応を振り返りながら、今後に生かすべき教訓と制度改革の必要性を探ります。 →「なぜ今回は動きが遅かったのか?」という問いに答える記事です。 5)【民間資本と公共事業の新しい関係性】 公共事業=税金頼みの時代は終わり?クラウドファンディング、地域ファンド、民間連携など、持続可能なインフラ再建のヒントを紹介します。 →地域経済を本気で立て直したい方におすすめです。
あなたの関心と行動が、より良い未来をつくる力になります。ぜひ、これらの関連記事もあわせてご覧いただき、深い理解と次の行動につなげてください。
以上です。 |
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