250624_ウォール街は今-空爆と世界経済のリアル

ウォール街が冷静だった理由

—トランプ政権の空爆と世界経済のリアルな行方—

前回のブログでは、“•分散投資を徹底すること：
株式、債券、不動産に加えて、実物資産やインフレ対応型資産などを組み合わせてバランスをとる。

• ユニーク資産への関心を高めること：
従来の資産運用ではカバーできないリスクに備えるため、ゴールドや公益株、インフレ連動債など新しい視点を取り入れる。
• 経済の“変化”を冷静に読み解く習慣を持つこと：
表面的な数値に踊らされず、政策の意図や市場の反応を見極める目を養う。”と書きました。

例によって前回の相場との比較です。

NYD前回５/23 $41,603.07でした。昨日は6/23 $42,581.78

為替相場前回5/23 142.59円/$ 昨日は6/23 145.06円/$

    中東情勢が緊迫する中、米国軍によるイランの核施設への攻撃を受けたイランの報復が限定的なものに留まっています。イラン議会は、ホルムズ海峡封鎖を承認したが決定は最高安全保障委員会または、ハメネイ師に委ねられています。

１．導入：世界が緊張する中、なぜ市場は動じなかったのか？

2025年6月、アメリカのトランプ政権がイランの核関連施設を精密に空爆したというニュースが世界中を駆け巡りました。地政学的には非常に深刻な事態であるにもかかわらず、ウォール街では株価の急落や金融市場の混乱といった動きはほとんど見られませんでした。

「戦争が起きるかもしれないのに、なぜ市場は冷静なのか？」

そんな疑問を持った方も多いのではないでしょうか。実際に、これまでの歴史を見ても、軍事衝突はしばしば世界経済に大きな影響を及ぼしてきました。原油価格の暴騰、金融市場の混乱、そして投資家心理の悪化など、さまざまな“リスクオフ”の連鎖を引き起こしてきたのです。

ところが、今回の空爆に対して、ウォール街は驚くほど理性的かつ楽観的な見通しを保っています。なぜ、市場は今回の事態に動じなかったのか？
その背景には、トランプ政権の「リアルポリティクス（現実主義外交）」の巧妙さと、ウォール街が描くアメリカ経済の強さへの信認がありました。

この記事では、今回の空爆をきっかけに顕在化した地政学リスクと経済の関係性、そしてそれにどう向き合うべきかについて、ウォール街の視点をもとにわかりやすく解説していきます。あなたの資産を守るために、何をどう見ていくべきか。ぜひ一緒に考えてみましょう。

２．問題提起：軍事的衝突が経済に与える影響とは？

現代の経済は、世界中のニュースや出来事と密接に結びついています。その中でも最も市場を動かす要因の一つが「軍事的リスク」です。空爆、戦争、領土紛争といった出来事は、一夜にして投資環境を激変させる力を持っています。

過去を振り返れば、イラク戦争、アフガニスタン紛争、湾岸戦争など、アメリカが関与した軍事行動はしばしば株価の急落や原油価格の高騰、債券市場の混乱といった現象を引き起こしてきました。そうした影響は、大企業だけでなく、あなたの資産形成や日々の生活にも確実に波及してきます。

特に注目すべきは、地政学リスクが高まると市場が「リスクオフ」に傾き、安全資産である金や米国債、ドルが買われる一方で、株式市場が大きく下落するという連鎖が起こることです。これは、一見すると遠い世界の話に思えるかもしれませんが、実際にはあなたの保有している投資信託や株式の価格にも直接影響を与えかねない重大な問題です。

今回のトランプ政権によるイラン核施設への空爆も、そのような大きな混乱を引き起こす可能性を秘めていました。しかし、結果は意外にも静かでした。なぜ、これほど深刻な出来事が起きたにもかかわらず、ウォール街は動じなかったのか？

この問いの答えを探ることが、これからの世界経済とあなたの資産運用を読み解く重要な鍵になります。

３．要因分析：なぜ市場は冷静だったのか？

軍事的な空爆というセンセーショナルな出来事があったにもかかわらず、ウォール街はなぜここまで冷静に反応したのでしょうか。その背景には、3つの明確な要因があります。

第一の要因は、今回の軍事行動が「短期・精密・人的被害最小」という条件を満たしていたことです。これは、ベトナム戦争やイラク戦争のようにアメリカが泥沼の地上戦に巻き込まれるリスクが極めて低いということを意味します。市場はその構造の違いをいち早く見抜き、「長期化しない限定的行動」として安心感を持ったのです。

第二の要因は、原油供給に対する深刻な懸念が現実化していないことです。中東情勢が不安定になると、真っ先に注目されるのがホルムズ海峡の動向ですが、今回の空爆後も同海峡は封鎖されておらず、エネルギー供給は安定を維持しています。アメリカ政府も戦略備蓄の開放や同盟国との連携を進め、原油価格の高騰リスクを抑える姿勢を明確にしています。

第三の要因は、米国株式市場の構造的な強さです。防衛産業や軍需関連株には資金が流入し、短期的な“ミニ軍需ブーム”の様相さえ見られました。テクノロジー株や消費関連株への影響も限定的で、「経済への直接的打撃はない」との見方が広がっています。

このように、軍事的な衝突があっても、条件次第では市場は冷静さを保つという事実が今回のケースで証明されたのです。そして、それは「すべての戦争が経済危機を招くわけではない」という新しい視点を私たちに投げかけています。

４．市場関係者の意見：実際のマネーはどこに動いたか？

ウォール街のアナリストやファンドマネージャーたちは、今回の空爆についてどう見ていたのでしょうか。市場が冷静だった背景には、専門家たちの戦略的な判断と資金の動きがありました。

まず、多くの機関投資家は今回の空爆を「限定的軍事行動の成功例」と位置づけました。ゴールドマン・サックスやJPモルガンのリポートでは、ホルムズ海峡の封鎖が起きていないことや、イラン側の報復が抑制的であることを踏まえ、「原油価格の高騰は一時的なものに留まり、長期的トレンドにはならない」との見解が示されています。

こうした見方に支えられ、実際に多くの資金が軍需関連株やサイバーセキュリティ分野に流れ込みました。防衛関連企業の株価は上昇し、一部では短期的な“軍需ブーム”とも呼べる現象が起きています。さらに、テック株や消費関連銘柄も大きな下落は見せず、投資家の心理には「中東情勢が米国の実体経済に与える影響は限定的」との前提が広がっていたのです。

一方で、安全資産への資金移動も同時に見られました。FRBによる利下げ観測の影響も相まって、米国債市場にはリスク回避的な資金が流入。長期金利は安定し、むしろ「米国債の信頼性」が再確認された格好です。加えて、金（ゴールド）やドルインデックスにも買いが入り、ややドル高が進行する結果となりました。

このように、ウォール街は危機に対して過剰に反応するのではなく、「抑制された軍事行動」と「堅調な米国経済」を天秤にかけ、理性的な資産配分を行っていたことが分かります。そしてこの動きは、あなたの投資判断にも重要なヒントを与えてくれるはずです。

５．対応策：個人投資家はどう備えるべきか？

今回のように、軍事的な緊張が高まっても市場が大きく動揺しないというケースがあると、投資判断はより難しく感じられるかもしれません。しかし、こうした不確実性の中だからこそ、冷静かつ戦略的な対応が求められます。

まず大切なのは、短期の地政学リスクと長期的な経済トレンドを分けて考える視点です。一時的な衝撃に惑わされず、政治的・軍事的イベントが本当に市場全体の構造を変えるのか、それとも一時的な“ノイズ”に過ぎないのかを見極めることが必要です。

次に、資産の分散と安全資産の組み合わせが有効です。今回のような局面では、軍需関連やサイバーセキュリティ分野の株が買われる傾向があります。これは、特定のテーマ株が危機時に強くなることを意味しています。同時に、金（ゴールド）や米国債、ドル資産への一定のシフトも堅実な手段といえるでしょう。

また、ウォール街の動きが示しているのは、「アメリカ経済への信頼は崩れていない」という投資家心理です。トランプ政権が減税や規制緩和などの景気刺激策を再び打ち出す可能性がある中で、米国中心の成長シナリオを想定する戦略も十分現実的です。

重要なのは、あなたが「どの時間軸で」「どのような目的で」投資を行っているのかを再確認することです。短期的な利ざやを狙うのか、中長期の資産形成を目指すのか。その目的によって、取るべき戦略は異なります。

最後に、情報の取捨選択力を養うことも、リスクに強い投資家になるための鍵です。センセーショナルなニュースに一喜一憂するのではなく、裏にある事実と数字に目を向け、確かな判断を下す力を少しずつ鍛えていきましょう。

６．まとめ：地政学リスクと経済安定の間で考える

今回のトランプ政権によるイラン核施設空爆は、見方によっては世界的な緊張を高めかねない重大な出来事でした。しかし、ウォール街の反応は予想外にも冷静で、市場全体が大きく崩れるような事態には至りませんでした。

その背景には、短期的かつ限定的な軍事行動であったこと、エネルギー供給リスクが管理可能と判断されたこと、そしてアメリカ経済への構造的な信頼がありました。市場関係者は、感情ではなく事実と数字に基づいて行動し、むしろ軍需関連や安全資産に的確に資金を移す動きを見せています。

この出来事は、あなたにとっても大きな学びを含んでいます。つまり、「軍事リスク＝即・暴落」ではないということ。そして、表面的なニュースの衝撃だけで判断せず、背景にある構造や市場の動きを読み解く姿勢が極めて重要だということです。

今後、イラン側の出方やイスラエルとの関係、さらには2025年の米大統領選といった要因がどのように作用するかによって、再び市場が大きく揺れる可能性はあります。しかし、そのたびに右往左往するのではなく、長期的な視野と分散された資産構成を持つことが、個人投資家にとっての最善の備えとなるでしょう。

あなたが今後、どのように情報を捉え、どのように判断するか。その積み重ねが、確かな資産形成と、将来への安心感へとつながっていくはずです。

以上です。