2026/1/5

260105_AGI社会-UBI時代に必要な仕事とは?

働かなくても生きられる社会で、人は何を失うのか?

—AGI時代の「仕事」と人間の価値—

 

1.導入:「働かなくても生きられる社会」は、本当に幸せなのか

もし、働かなくても毎月の生活費が自動的に支給される社会が実現したら、あなたはそれを「理想の未来」だと感じるでしょうか。
AGI(汎用人工知能)とロボットがあらゆる仕事を代替し、国はUBIによって最低限の生活を保障する。貧困も過労もなくなり、生きるために無理をする必要もない。多くの人が、そこに人類の到達点を見るかもしれません。

しかし、私はこの未来像に、拭いきれない違和感を覚えます。
なぜなら、人はこれまで「役に立つこと」「必要とされること」によって、自分の居場所を確かめてきたからです。仕事が完全に消えたとき、あなたは「自由」を手に入れる一方で、自分は何者なのか、なぜここにいるのかという問いに、正面から向き合うことになります。

本記事では、AGIとUBIがもたらす理想の裏側で、人間が静かに失いかねないものに焦点を当てながら、これからの時代において本当に必要とされる「仕事」とは何かを、あなたと一緒に考えていきます。

 

2.AGI社会がもたらすのは“貧困の消滅”ではなく“意味の消滅”

AGIとロボットが社会の生産活動をほぼすべて担うようになると、食料・住居・エネルギーの供給コストは限りなく下がります。その結果、国は国民全員に最低限の生活費を配るベーシックインカム(UBI)を導入せざるを得なくなります。
この仕組みが実現すれば、理論上は働かなくても生きていける社会が完成します。経済的理由による貧困や過労死、自殺といった問題も、大きく減少するでしょう。

しかし、ここで見落とされがちなのが、人間は「生きられる」だけでは満たされない存在だという事実です。
あなたもこれまで、仕事を通じて誰かの役に立ち、感謝された経験があるはずです。そのとき感じた充実感は、単なる収入以上の意味を持っていたのではないでしょうか。

人間にとって仕事とは、単なる生計手段ではありません。
社会との接点であり、自分がこの世界に必要とされているという証明でもあります。ところがAGI社会では、その役割の大半を人間よりも正確で効率的な存在が担います。あなたがどれほど努力しても、成果の質や速度でAIに勝つことはできません。

その結果、多くの人が直面するのが、
「自分はこの社会にとって不要なのではないか」
という問いです。生活は保障されているのに、心は満たされない。やるべきことがなく、比較の基準も失われ、時間だけが過剰に与えられる。この状態は、決して自由とは言えません。

本記事が問題にしているのは、AGIやUBIそのものではありません。
技術によって労働が消えたあと、人間の“意味”をどう支えるのかという点です。この問いに答えを出せないままでは、理想の社会は、静かな空虚へと変わっていく危険をはらんでいます。

 

3.人はなぜ「役割」を失うと壊れてしまうのか

人間が仕事を失ったときに感じる苦しさの正体は、収入の減少だけではありません。
本当の問題は、自分が果たしてきた役割そのものが消えてしまうことにあります。この構造は、すでに私たちの身近な現実として表れています。
たとえば定年退職です。生活に困らない年金や貯蓄があっても、退職後に急激に気力を失い、無気力や孤独感に悩まされる人は少なくありません。これは、「会社員」という役割を通じて得ていた社会との接点が、ある日突然断ち切られるからです。

心理学や社会学の分野では、人の自己認識は「他者との関係性」によって形づくられるとされています。
仕事とは、
・誰かに求められ
・何かを任され
・結果に対して反応を受け取る
という循環の中で、自分の存在を確かめる装置として機能してきました。

ところがAGI社会では、この循環が根本から崩れます。
どれほど丁寧に仕事をしても、AGIのほうが速く、安く、正確に成果を出します。あなたが善意で行うボランティアや創作活動でさえ、効率や完成度という物差しでは必ずAIに負けてしまうのです。

その結果、人は次第に比較の土俵に立つこと自体を諦めます。
「どうせ自分がやらなくてもいい」
「自分より優れた存在がいる」
こうした思考が積み重なることで、挑戦する意欲そのものが削がれていきます

問題の要因は、暇になることではありません。
「自分が必要とされている」という感覚を得られなくなることです。役割を失った人間は、自由なはずの時間を楽しむことができず、かえってその時間に押し潰されてしまいます。

AGI社会が突きつけているのは、単なる雇用の問題ではありません。
人間は役割なしには安定して生きられない存在であるという、厳しい現実なのです。

 

4.「それでもUBIなら大丈夫」と考える人々の声と不安

AGI社会やUBIについて語られるとき、肯定的な意見は少なくありません。
「生活のために嫌な仕事をしなくてよくなる」
「お金の不安から解放され、自由に生きられる」
こうした声は、これまで長時間労働や成果主義に苦しんできた人ほど強くなります。あなたも一度は、“何もしなくても生きていけたら楽なのに”と感じたことがあるかもしれません。

また、UBIによって最低限の生活が保障されれば、挑戦や学びに時間を使えるという意見もあります。
仕事に縛られず、趣味や創作、地域活動に没頭できる社会は、一見すると非常に魅力的です。実際、「暇を楽しめる人にとっては理想の世界だ」という考え方もあります。

しかしその一方で、はっきりと言葉にされない不安や戸惑いも、確実に存在しています。
「毎日、何をして過ごせばいいのかわからない」
「誰からも必要とされていない気がする」
「社会とのつながりが薄れていくのが怖い」
こうした感情は、UBIそのものへの反対ではなく、役割を失うことへの直感的な恐怖と言えるでしょう。

特に中高年層からは、定年後の経験を通じて、こうした不安を現実的な問題として捉える声が多く聞かれます。
生活に困っていないにもかかわらず、心が空っぽになっていく感覚。人と会う理由が減り、社会から少しずつ切り離されていく感覚。これは決して特別な話ではありません。

若い世代の間でも、「自由になれるはずなのに、何を目標にすればいいのかわからない」という戸惑いが見られます。
目標を与えられてきた時代から、自分で意味をつくらなければならない時代への移行に、人はまだ慣れていないのです。

国民の意見を総合すると、AGI社会に対する期待と不安は表裏一体であることがわかります。
生活が守られる安心感と引き換えに、「自分は何者なのか」「何のために生きるのか」という問いが、これまで以上に重くのしかかってくる。その事実に、多くの人がまだ明確な答えを持てずにいます。

 

5.AGI時代に人間が担うべき“新しい仕事”とは何か?

AGI社会において、人間が再び意味を取り戻すためには、「仕事とは何か」という定義そのものを更新する必要があります。
これまでの仕事は、効率・成果・生産性によって評価されてきました。しかし、その物差しのままでは、人間は必ずAIに敗れます。そこで求められるのが、価値の軸を根本から切り替えることです。

その第一歩が、「消費」から「貢献」への転換です。
どれだけ多くを手に入れたかではなく、誰のために、どのような時間を使ったかが価値になる社会です。たとえば、祖母が孫のために編む手編みのマフラーは、市販品より性能が劣るかもしれません。それでもそこには、AIには決して生み出せない関係性と物語があります。

AGI時代の仕事とは、感謝を生み出す行為だと言い換えることができます。
誰かの話を丁寧に聞くこと。手間のかかる支援を引き受けること。非効率だとわかっていても、人のために時間を使うこと。これらは経済合理性では測れませんが、人と人をつなぎ、存在意義を実感させる力を持っています。

もう一つ重要なのが、他者との比較から降りることです。
AIより優れているかどうかではなく、昨日の自分より一歩前に進めたかを基準にする。この視点を持てる人だけが、暇という時間を空虚ではなく、創造の場に変えることができます。

AGIは、人間から労働の重荷を取り除きます。その代わりに、
「あなたは何者で、何を大切にし、誰にどう関わりたいのか」
という問いを突きつけてきます。これに向き合うこと自体が、AGI時代の中心的な仕事になるのです。

つまり、AGI社会における人間の役割とは、意味をつくり、関係を育て、感謝が循環する場を生み出すことです。これはAIに奪われる仕事ではなく、人間にしか担えない仕事だと言えるでしょう。

 

6.まとめ:AGI社会は人類に“自由”と同時に“覚悟”を求めている

AGIとUBIによって、私たちはこれまで人類が経験したことのない自由を手に入れようとしています。
生きるために働かなくてもよい社会は、確かに多くの苦しみを取り除くでしょう。しかし本記事で見てきたように、それは同時に「役割を自分でつくる責任」を引き受ける社会でもあります。

仕事が消えることで失われるのは、収入ではありません。
「自分は必要とされている」という実感です。この感覚を外部から与えられてきた時代は終わり、これからは、あなた自身が意味と居場所を創り出さなければなりません。

その鍵となるのが、貢献という価値観です。
効率や成果ではなく、誰のために時間を使ったのか。どのような思いで関わったのか。そこに生まれる感謝や関係性こそが、AGI時代における人間の仕事の核心になります。

また、AIとの比較をやめ、他人ではなく「昨日の自分」と向き合う姿勢も欠かせません。暇という時間は、逃げれば空虚になり、向き合えば創造の源になります。その分かれ道に立つのが、まさにこれからのあなたです。

AGI社会は、私たちを楽にしてくれます。しかし、生き方まで決めてくれるわけではありません。
「あなたは何者なのか」
「何を大切にして生きたいのか」
この問いに答え続けることこそが、これからの時代を生き抜くための最も重要な仕事なのです。

 

7.関連記事のご紹介:「考えることを手放さない」ために、

あわせて読んでほしい記事

AGI社会やUBI時代を考えるうえで重要なのは、技術そのものよりも、人間がどのように意味や判断軸を失っていくのか、あるいは取り戻せるのかという視点です。本記事で感じた違和感や問いを、さらに深めるために、以下の関連記事も参考にしてみてください。

ひとつは、技術が進歩しても人間の不安が消えない理由を掘り下げた記事です。便利さが増すほど、なぜ人は安心できなくなるのか。その構造を知ることで、AGI社会に対する漠然とした不安を言語化できるはずです。

また、「考えなくても生きられる社会」が抱える危うさを扱った記事では、判断を外部に委ね続けた先に何が起きるのかを整理しています。UBIによって生活が守られても、思考を放棄すれば自由は形骸化してしまう。その問題意識は、本記事とも強くつながっています。

さらに、孤立が進む現代社会において、なぜ人と人とのつながりが重要なのかを考察した記事もあります。感謝や関係性が価値になる時代において、コミュニティや対話が果たす役割は、今後ますます大きくなるでしょう。

1)「技術が進歩しても、人はなぜ不安になるのか」⭐️

便利さと引き換えに失われてきた人間の思考習慣を掘り下げています。

2)「考えなくても生きられる社会の危うさ(英文)」⭐️

判断を外部に委ねることが、どのように主体性を奪っていくのかを具体的に解説しています。

3)コミュニティや対話の価値⭐️

孤立が進む現代社会において、人と人とのつながりがなぜ重要なのかを考察しています。これらの記事は、AGI時代を迎える前に、あなた自身の立ち位置を確認するためのヒントになるはずです。

 

これらの記事を通じて、あなた自身の立ち位置や価値観を整理し、AGI時代において何を大切に生きていくのかを、ぜひ考えてみてください。本記事が、その思考の入り口になれば幸いです。

 

以上です。