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2026/1/30
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260130Zモニター-財政法4条の縛り |
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![]() 前回は、“ 電気・ガス補助金の事例が示したように、政治が本気で優先順位を示せば、流れは変えられることも明らかになりました。つまり、今の状況は「詰んでいる」のではなく、まさに分岐点に立っていると言えるのです。 今回の総選挙は、高市政権にとって最大の正念場となります。 次年度予算の規模を拡大できるのか。 看板政策を守り抜けるのか。 そして、成長を重視する勢力との関係を維持できるのか。これらの判断一つひとつが、日本の10年後、20年後を左右する選択になります。”と書きました。 あなたにとっても、この問題は決して遠い政治の話ではありません。 賃金、雇用、事業環境、地域の活力、国防力の強化―それらはすべて、どの分野に予算が配分されるのかによって形づくられます。補正予算の行方に関心を持つことは、あなた自身の未来に目を向けることと同義なのです。
なぜ日本は「使えるはずのお金」を使えないのか? ─戦後から続く〈財政法4条の縛り〉という見えない前提—
1.導入:「財源はあるのに使えない国」への違和感 あなたは最近、こんな言葉を耳にしていないでしょうか。 「減税は財源がないから難しい」「将来世代にツケを回してはいけない」「国の借金が多すぎる」。どれも、もっともらしく聞こえます。 けれど、少し立ち止まって考えてみると、不思議な違和感が残ります。 なぜなら、日本は世界でも有数の経済規模を持ち、技術も人材も、そして資産も抱えている国だからです。 それにもかかわらず、あなたの生活を支えるはずの政策―― 景気を下支えする減税、インフラや教育への投資、家計を守る支援策―― それらはいつも決まって、「できない理由」から語られます。本当に、日本には使えるお金がないのでしょうか。 それとも、「使ってはいけない」と思い込まされてきただけなのでしょうか。 実はこの違和感の奥には、長年ほとんど疑われることなく受け入れられてきた、 ある法律の存在があります。 それが、日本の財政運営を静かに縛り続けてきた「財政法第4条」です。この記事では、単なる財政論や賛否の話ではなく、 あなたが当たり前だと思ってきた前提そのものを、ひとつずつ見直していきます。 なぜ日本は「使えるはずのお金」を使えないのか。 その答えは、意外なほど制度の奥深くに隠されています。
2.日本の財政を縛り続ける「財政法4条」とは何か? ここで、あなたにぜひ知っておいてほしい法律があります。 それが、日本の財政運営の根幹に位置づけられている「財政法第4条」です。財政法4条は、簡単に言えば、 「国の歳出は、原則として税収などの歳入でまかなうべきであり、国債に依存してはならない」 という考え方を法律として定めたものです。一見すると、とても健全で、慎重なルールのように見えます。 家計に例えれば、「借金に頼らず、収入の範囲で生活しましょう」という話だからです。 しかし、ここで立ち止まって考えてみてください。 国家の財政と、あなた個人の家計は、本当に同じものなのでしょうか。国は、通貨を発行できる存在です。 国は、将来にわたって税を徴収し、資産を保有し、経済全体に影響を与えます。 それにもかかわらず、日本では長年にわたり、 「国も家計と同じように、借金をしてはいけない」 という発想が、当然の前提として扱われてきました。 この前提を、法律レベルで固定してきたのが、財政法4条です。 そしてこの条文は、 プライマリーバランス(PB)を単年度で黒字化すべきだ という政策目標を正当化する根拠として、繰り返し使われてきました。その結果、あなたの生活に直結する政策であっても、 「その年の税収が足りない」 「恒久的な財源が見つからない」 という理由だけで、次々と見送られてきたのです。 重要なのは、ここで語られてきた「健全財政」という言葉が、 本当に唯一の正解だったのかどうかという点です。 財政法4条は、単なる技術的な会計ルールではありません。 それは、日本の政治と行政が、 「できること」と「考えてはいけないこと」を分けるための枠組み として機能してきました。なぜ、このような強い縛りが生まれたのか。 そして、なぜ今もなお、ほとんど疑われることなく使われ続けているのか。 次の章では、財政法4条が生まれた歴史的背景に踏み込み、 この条文が持つ本当の性格を、より具体的に見ていきます。
3.なぜこの条文は生まれ、ここまで絶対視されてきたのか? ここで、もう一段深く踏み込みます。 財政法4条は、なぜこれほどまでに強い効力を持ち、長年にわたって疑われてこなかったのでしょうか。その答えは、この条文が作られた「時代」と「目的」にあります。 財政法4条が制定されたのは、戦後まもない占領期です。 当時の日本は、主権を大きく制限され、国家としての行動範囲も厳しく管理されていました。 その中で、大蔵省主計局の幹部は国会答弁において、 財政法4条の目的を「健全財政の確保」と同時に「財政を通じた戦争の防止」だと、はっきり説明しています。これは非常に重要なポイントです。 つまりこの条文は、単なる会計上のルールではなく、 日本が再び大規模な国家動員や軍事力を持てないようにするための“安全保障的な装置” として設計されていた側面があったのです。 国が自由に国債を発行し、大きな財政支出を行える状態は、 戦時体制への移行を容易にします。 だからこそ、財政そのものを縛ることで、国家の行動力を抑える。 それが、占領期に組み込まれた発想でした。しかし、あなたも感じているかもしれません。 戦後直後の前提条件と、現在の日本は、まったく同じでしょうか。国際環境も、経済構造も、人口構成も、社会課題も、大きく変わっています。 それにもかかわらず、財政法4条だけは、 ほとんど手を付けられない「絶対的な前提」として残り続けてきました。 2016年、当時の安倍首相は国会答弁で、 財政法4条について 「戦争防止を立法目的とするものではない」 と明確に否定しています。 これは、占領期に形成された解釈を、政治の責任で修正しようとする重要な試みでした。それでも現実には、財務省や一部メディア、自民党税調などが、 「減税には恒久財源が必要」 「単年度での財政規律が不可欠」 といった主張を繰り返し、 財政法4条を“使えない理由の根拠”として使い続けてきました。 ここで見えてくるのは、 財政法4条が単なる法律条文ではなく、 政策の選択肢そのものを狭める「思考の枠」として機能してきたという事実です。なぜ減税が封じられ、なぜ投資が後回しにされるのか。 それは財源がないからではなく、 「そう考えてはいけない」という前提が、最初から置かれているからなのかもしれません。 次の章では、こうした構造の中で、 国民はこの説明に本当に納得してきたのか、 現場の声や違和感に目を向けていきます。
4.減税も支援も拒まれる理由に、国民は納得しているのか? ここまで読み進めてきたあなたは、 「制度の背景は分かった。では、それを受け入れてきた側はどうだったのか」 そんな疑問を持っているかもしれません。実際、日本では長年にわたり、 減税や積極的な財政支出に対して 「将来世代にツケを回すことになる」 「国の借金がこれ以上増えるのは危険だ」 という説明が繰り返されてきました。 この言葉を聞いて、不安を感じた経験はないでしょうか。 多くの人は、専門的な反論材料を持たないまま、 「そう言われるなら仕方がない」 と受け止めてきたはずです。しかし、よく考えてみてください。 あなたが感じてきた不安は、事実に基づくものだったでしょうか。 それとも、前提を説明されないまま与えられた印象だったでしょうか。 たとえば、国債が増えることだけが強調され、 その裏側にある国の資産や経済成長による税収の変化について、 丁寧に説明された記憶はあるでしょうか。また、減税や支援策が見送られる一方で、 あなたの生活は本当に安定してきたでしょうか。 実質賃金は伸び悩み、物価は上がり、 将来への不安はむしろ強まっていると感じているかもしれません。 ここに、重要なねじれがあります。 「将来世代のため」と言われてきた政策が、 実際には現在の世代の生活基盤を弱らせてきたのではないか という疑問です。最近では、こうした説明に違和感を覚える声も増えています。 「なぜ不況のときにまで緊縮なのか」 「家計が苦しいときに、なぜ国も財布を閉じるのか」 「本当に選択肢はそれしかないのか」 こうした問いは、決して一部の専門家だけのものではありません。あなた自身も、 『仕方がない』と納得してきたつもりで、 どこか腑に落ちない感覚を抱えてきたのではないでしょうか。その違和感は、間違いではありません。 それは、説明されてこなかった前提に気づき始めた証拠です。 次の章では、こうした疑問に対して、 どのような別の考え方があり得るのか。 国債を一律に「悪」とみなさない財政の視点について、 具体的に見ていきます。
5.国債を“悪”と決めつけない財政へ―投資国債と国家バランスシートという視点 ここからは、「では、どう考え直せばよいのか」という段階に入ります。 財政法4条の問題点を理解したあなたに、別の見方を提示します。これまで日本では、国債という言葉そのものが、 「借金=悪」 というイメージと強く結びつけられてきました。 しかし本来、国債は一つの道具にすぎません。 問題は、何のために使われるのかです。あなたの身近な例で考えてみてください。 将来の収入や生活の質を高めるために、 教育や住宅、事業に投資することがあります。 その際、すべてを現金だけでまかなわなければならない、 と考える人は多くないはずです。 国家も同じです。 将来の生産力を高めるインフラ整備、 人材を育てる教育投資、 技術革新につながる研究開発。 これらは単なる「支出」ではなく、 将来の国富を生み出す投資です。そこで出てくるのが、「投資国債」という考え方です。 国債をすべて同列に扱うのではなく、 将来に価値を生む支出と結びついたものとして評価する。 この視点に立てば、 国債=無条件に悪 という単純な図式は成り立たなくなります。 もう一つ、重要な視点があります。 それが、国家のバランスシートで財政を見るという考え方です。これまで強調されてきたのは、 「負債はいくらあるか」という一点でした。 しかし、あなたも企業の決算を見るとき、 借金の額だけで判断はしないはずです。 資産と負債を合わせて見るのが当たり前です。国も同様です。 道路、港湾、上下水道、公共施設、 教育によって蓄積された人的資本。 これらはすべて、国の資産です。 にもかかわらず、日本の財政議論では、 資産の側がほとんど語られてきませんでした。この見方を変えることは、 財政を「無秩序に使え」という話ではありません。 むしろ逆です。 何に使うべきで、何に使ってはいけないのかを、 より厳密に判断するための視点なのです。財政法4条を絶対視し続ける限り、 こうした議論は入り口で止められてしまいます。 だからこそ必要なのは、 条文そのものの見直し、 あるいは少なくとも解釈の転換です。 次の章では、ここまでの話を整理しながら、 本当に問われているものは何なのか、 あなた自身の判断としてどう受け止めるべきかをまとめていきます。
6. まとめ:問われているのは財政規律ではなく「前提を疑う力」 ここまで読み進めてきたあなたは、 「財政法4条があるから仕方がない」 という説明が、決して中立的な事実ではなかったことに気づいているはずです。本当に問われているのは、 財政規律を守るか、緩めるか、という単純な二択ではありません。 問われているのは、 どの時代の前提を、どこまで引き継ぎ続けるのかという判断そのものです。 財政法4条は、戦後占領期という特殊な環境の中で、 日本の国家行動を制限する目的も含めて設計されました。 それ自体が直ちに「悪」だと言いたいわけではありません。 問題は、その前提が変わった後も、検証されないまま絶対視されてきたことです。あなたの生活を振り返ってみてください。 景気が良くなった実感は乏しいまま、 社会保障への不安は減らず、 「将来のために我慢が必要だ」という説明だけが積み重なってきました。それでもなお、 「法律で決まっているから」 「財源がないから」 という言葉が、思考の入り口でブレーキをかけてきました。 しかし、法律は自然現象ではありません。 人が作り、人が解釈し、人が見直すものです。 特に財政のルールは、 国民の生活や将来世代の選択肢に直接影響します。 だからこそ、 「守るべき規律は何か」 「変えるべき前提はどこか」 を、民主的に問い直すことが欠かせません。財政法4条をめぐる議論は、 単なる専門家の話ではありません。 それは、 あなたがどんな社会で生き、 どんな未来を次の世代に渡したいのか という問いと直結しています。ここで必要なのは、 無責任な楽観でも、恐怖に基づく思考停止でもありません。 前提を疑い、事実を見比べ、自分の頭で判断する力です。 次の章では、 こうした視点をさらに深めるために、 関連する過去の記事を紹介します。 関心を持ったテーマから、ぜひ読み進めてみてください。
7.関連記事:あわせて読みたい:財政と経済を考えるための関連記事 ここまでお読みいただいたあなたは、 「財政は難しい専門家の話」という距離感から、 「自分の判断に関わる問題」として、このテーマを捉え直し始めているはずです。ただし、財政法4条の問題は、単独で完結する話ではありません。 それは、 「国の借金とは何か」 「なぜ不安だけが強調されてきたのか」 「成長と財政規律は本当に両立しないのか」 といった、より広い論点とつながっています。そこで、あわせて読んでいただきたい関連記事を紹介します。 1)日本の公的債務:その実態と私たちへの影響⭐️ 「国の借金=あなたの借金」という説明に違和感を持ったことがあるなら、 国債の仕組みや、公的債務の実態を整理した記事が役に立つでしょう。 数字の大きさではなく、構造から理解することで、 不安の正体が見えてきます。 2)財政健全化と経済成長の両立:可能性と課題⭐️ 「財政健全化」と「経済成長」は本当に対立するのか という疑問を持ったあなたには、 緊縮政策と景気の関係を検証した記事がおすすめです。 ここでは、国内外の事例をもとに、 単純な二項対立が成り立たない理由を解説しています。 3)「世代間格差:財政政策が若者に与える影響」⭐️ 将来世代という言葉が、どのように使われてきたのか に関心があるなら、 世代間負担や人口構造の変化を扱った記事も参考になります。 「未来のため」と言われてきた政策が、 本当に未来につながっているのかを考える手がかりになるはずです。 これらの記事は、 あなたに特定の結論を押し付けるためのものではありません。 目的はただ一つ、 判断の材料を増やすことです。財政をめぐる議論で最も危険なのは、 「難しいから任せる」 「決まっているから考えない」 という姿勢です。 この記事をきっかけに、 あなた自身が前提を確認し、 別の可能性を知り、 納得できる判断を重ねていくこと。 それこそが、民主的な議論の出発点になります。必要なところから、ぜひ読み進めてみてください。 考える力は、使わなければ衰えます。 そして、考え続けることそのものが、 あなたの選択肢を守る力になります。 以上です。 |
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